新型コロナウイルス(COVID-19)によるバングラデシュ経済への影響

投稿:2020年4月19日

バングラデシュでの初めての感染者は、3月8日に発見され、その数日後には、政府当局により最初の死亡者が発表されました。集団(クラスター)感染の懸念が高まる中、バングラデシュ政府は、全国民1.6億人の命を守るために、様々な取り組みや対策を講じています。

世界でも人口密度の高い国として知られるバングラデシュは、新型コロナウイルスの急速な感染拡大が特に顕著に見られると予想されます。バングラデシュ政府は、さらなる蔓延を防ぐために、3月26日から封鎖措置(ロックダウン)を実施しており、4月25日まで再々延長されました。政府は、一般市民の不要不急の外出を禁止し、社会的距離を保つように呼びかけています。現時点(4月19日)での感染者数は2,456名、そのうち91名が亡くなっています。

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図1:バングラデシュの感染者数と死亡者数の推移

Source: Institute of Epidemiology Disease Control And Research (IEDCR)

バングラデシュ政府は、新型コロナウイルスへの対策措置として、約1兆タカ(117.8億ドル)の支援パッケージを発表しており、この金額は、GDPの約3.3%に相当します。支援パッケージは、主に社会的弱者とされる国民を対象にした様々な社会的セーフティーネット構築へのプログラムに使用される予定となっています。

低所得者層(特に縫製関連事業、サービス業、小売業、運送業などの従事者)や非正規雇用労働者などは、医療サービスを十分に受けることができず、大変困難な状況に直面していると言われています。

農村部から首都ダッカへの出稼ぎ労働者の流出がすでに始まっており、新型コロナウイルスの脅威が長期化した場合、多くの失業者とその家族が、貧困の危機にさらされることとなります。バングラデシュ政府は、十分な食用穀物が保管されていると発表していますが、長期間に渡るロックダウンにより、今後、食糧の安全保障も脅かされる可能性があります。

ロックダウンの長期化に伴い、バングラデシュ政府は、医療、食料品、医薬品、居住シェルターなどの基本的なニーズの保証を主要課題として、解決に向けて早急に取り組む必要があると考えられます。

Source: Johns Hopkins University

縫製産業への影響

バングラデシュは、中国に次いで世界で第二のアパレル製品生産輸出国として知られており、400億ドルにおよぶ輸出収益の大半を占める縫製産業によって支えられています。新型コロナウイルスによる同産業への影響は深刻で、何百社もの縫製工場が注文のキャンセルなどを受けており、輸出額の損失は、約60億ドルにのぼると言われています。

バングラデシュ縫製輸出業者協会(BGMEA)のRubana Huq会長によると、 新型コロナウイルスの影響による発注のキャンセルによる総額は、35億ドルとされています。

縫製産業は、輸出総額400億ドルのうちの約84%を占めており、400万人以上の従業員が雇用されています。労働者のうち、かなりの割合を女性が占めており、推定2,000万人が直接・間接的に法制関連事業に従事していると言われます。

新型コロナウイルスによる損失を抑えるために、バングラデシュ政府は、5億9,500万ドルの支援パッケージを発表し、縫製工場経営者が労働者に給与を支払えるように対策を講じていますが、資金や返済期間が十分ではないとの声も聞かれます。

海外労働者からの送金金額の減少

バングラデシュの海外労働者は、同国の経済成長にとって、長年にわたり主要な収入源の一つです。

2018〜2019年にかけて、世界各国のバングラデシュ海外労働者数は約1,000万人、送金総額は164億ドルであり、同産業に関しても、新型コロナウイルスによる経済への影響が非常に大きい産業であると予想されています。

海外労働者の中には、新型コロナウイルスの影響により帰国している労働者も多く、数百人にのぼる家族、特に農業従事者への影響は深刻であると考えられます。

2018〜2019年において、海外送金の61.71%が、下記のサウジアラビア(31.1億ドル)、アラブ首長国連邦(25.4億ドル)、アメリカ(18.4億ドル)、クウェート(14.6億ドル)、イギリス(11.17億ドル)からの送金でした。

新型コロナウイルスのホットスポットとして挙げられているアメリカやイギリスでは、感染対策のために非常に厳しい規制がしかれており、バングラデシュの海外送金も影響を受けています。また、諸国の景気の低迷に伴い、労働者から不安の声もあがっています。

バングラデシュ経済の今後の見通し

バングラデシュは過去数年間、7%以上の経済成長率を維持しており、昨年は、8.15%のGDP成長を記録しました。また、1人当たりの所得は1,906ドルに向上しています。

バングラデシュ経済は、今後も右肩上がりに成長していくことが予測されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、減速すると予想されています。

4月14日に発表された国際通貨基金(IMF)の報告では、今年は2%の成長を見込んでいますが、2021年には、再度急成長を記録し、9.5%の成長率を達成すると予測しています。

一方、世界銀行は、2020年の2〜3%の成長率の停滞に続き、2021年も新型コロナウイルスの影響により1.2〜2.9%の成長率だと予測しています。

Mustafa Kamal財務大臣は、上記の予測を強く批判しており、工業やサービス業が新型コロナウイルスの影響を受けることは認めていますが、同国の農業部門における成長により、経済成長への影響は最小限にとどめられると予測しています。

国際通貨基金(IMF)は、2020年の世界経済の今後の見通しについて、世界経済が3%縮小する可能性があると予測しています。2021年には5.8%に回復すると見込んでいますが、新型コロナウイルスによる実際の影響はさらに深刻であるとの見方もあります。

IMFのGita Gopinathチーフエコノミストは、最良予測として、世界経済は今後2年間で9兆ドルの損失を受けるとし、この数字は、ドイツや日本などの先進国のGDP総額を上回る予測となります。バングラデシュのような発展途上国は、新型コロナウイルスの世界的な貿易取引の混乱により、失業者が長期にわたり非常に厳しい状況に陥る可能性があります。

執筆:NewVision Solutions Ltd.(Sujon Ahamed(市場調査チームリーダー)、福嶋祐子(事業開発部)、Md. Obaid Hossain(デザイナー))